温度がDINレール電源の寿命に及ぼす影響
システムエンジニアにとって、信頼性が高く、長く使用できる電源を確保することは非常に重要です。故障しやすい電源の使用は、労力、費用、時間といったコストの増加につながります。
寿命と信頼性に重大な悪影響を及ぼす「熱(高温)」:
電源の最低耐用年数は、電解コンデンサの耐用年数に左右されます。温度が高いほど電解コンデンサは乾燥が進みますが、温度が10℃上昇するだけで、電解コンデンサの耐用年数は半減します。DINレール電源の耐用年数を最大化するには、過熱からデバイスを保護する必要があり、電源装置の冷却システムが重要な役割を果たします。発熱ゼロの電源装置が理想的ですが、現実問題として、電力損失による熱の発生は避けられません。
高効率な電源は低発熱
電源の低発熱化には、高効率化が不可欠です。
効率値は、電源の入力電力に対する出力電力の比率を示すもので、その差は、損失として熱に変換されます。電源効率が高いほど、エネルギー損失、つまり発熱量が少なくなり、必要な冷却量も少なくなります。その結果、電解コンデンサは、メーカーが定める耐用年数を満たすことができ、ユニット全体の信頼性も向上します(図2参照)。
全負荷効率が高ければ、省スペース設計が可能になります。電源装置の発熱が少ないため、場合によってはヒートシンクが不要になります(図2参照)。一方で、実際には部分負荷効率の重要性も高まっています。通常、電源は常に全負荷で運転されることはないため、制御キャビネットの熱設計において、典型的な負荷の損失を考慮する必要があります(図3のCP20.241の例参照)。
無負荷運転時の損失も考慮する必要があり、「スタンバイモード」でも制御キャビネットに熱ストレスを与えない低い損失レベルが求められます。
原理:電源効率が高いほど、熱による電力損失が少なくなります。
長寿命化には熱放散の最適化が不可欠
熱は、コンポーネントの耐用年数に大きな影響を及ぼします。高効率に加えて、優れた冷却システムも長寿命化に不可欠です。
高効率の電源でも、微量のエネルギーが常に失われています。プルスの電源装置は最大95.6%という極めて高い効率性を備えていますが、残りの4.4%の入力電力は損失します。電力損失による熱発生は避けられないため、熱を周囲に直接放散する必要があります。ハウジングの外表面と、装置を通過する対流空気流がその役割を果たします。この対流空気流は、遮断されることなくコンポーネント間を流れなければなりません。
しかし、これを実現するのは容易ではありません。電源の複雑化と小型化が進んでおり、装置内部のスペースは限られています。デバイス内のコンポーネントとして、冷却ダクトを設置することが非常に重要です。また、デバイス内に熱がこもらないように、熱源を短く、直接接続することも選択肢の1つです。スマートな冷却システムによって、多くの場合、内部のヒートシンクが不要になり、結果として軽量化につながり、電源のコストも大幅に削減することが可能になります。
実証試験:サーモグラフィカメラで映し出した電源装置
サ—モグラフィでDINレール電源を映し出すと、コンポーネントの適切な配置が、装置内部の温度上昇の抑制につながっている様子が確認できます。特に対流冷却式スイッチモード電源では、サーモグラフィによる検証によって有益な情報が得られます。
高性能サーモグラフィカメラを使用した実証試験では、装置内の高温スポット、特定箇所の熱発生、最も高温になるコンポーネントの位置を確認できます。「クールデザイン」により、負荷時でも過熱することなく、電源装置の機能は最大限に発揮されます。
温風は、対流冷却によって気流に乗って外部に導かれます。気流が効果的に機能していることは、サ—モグラフィで検証可能です。
PULS CP10のサ—モグラフィ画像から、電解コンデンサ(画像内の1、2、3、4、5番)などの温度に敏感なコンポーネントが最適な位置に配置され、低温を維持していることが確認できます(図4、5参照)。