電源効率を正確に測定する方法
メーカーのデータシートには、電源電圧や負荷といった条件の違いを考慮した電源効率や電力損失の情報が掲載されていないことが多いため、ユーザー自身で電源効率を測定することが推奨されます。本記事では、電源効率測定における注意点をご紹介します。
マルチメーター、ワットメーター、パワーアナライザの中で、電源効率の測定に最適なツールは?
効率を測定する機器は数多くありますが、さまざまな信号(ACまたはDC)の測定における測定公差や機能は大きく異なります。
測定セットアップのミスを回避する方法
高精度で高価なパワーアナライザを使用しても、測定セットアップが適切でなければ、正確な結果を得られない可能性があります。
正しい配線:
被測定デバイスに起因しない電力損失は、測定には一切含めてはなりません。これは、測定セットアップ時の正しい配線のための大原則です。ケーブルや接触抵抗は、測定結果に誤差をもたらす可能性のある電力損失を引き起こします。適切な4端子測定(ケルビン測定)には、電流と電圧の測定に別々のケーブルを使用する必要があります。(画像2参照)
電圧源:
DC入力電圧のスイッチモード電源には、シンプルなDC電圧供給で十分です。電圧源の内部抵抗が、電源の正弦波の曲線形状を通じてAC測定に与える影響を確認しておくことが重要です。PFC非搭載の240W電源では、絶縁型電圧調整器からのソフト電力と電子式AC電源からのハード電力の間に0.4%の差が測定されました。これによって最も再現性の高い値を得られます。
EMC干渉:
試作段階のシールドされていない電源は、メーターに干渉したり、負荷を変動させたりする可能性があります。メーターからのHF干渉がある信号は受け入れてはなりません。入力ラインにインダクタ主体のフィルタを追加することによって、これを回避できます。また、電力損失が測定に影響しないようにする必要があります。電波干渉を抑制するクリーンな電源であれば問題ありません。
負荷:
電源に加えて、使用する負荷にも安定性と再現性が求められます。電力抵抗器の負荷は、定電流を流さないため問題となりますが、電子負荷は、被測定デバイスの再現性のある定義された負荷であり、遷移抵抗が変動しても電流は変化しません。
環境条件に関する注意点
環境条件に関して、電源からの電力損失は温度に依存するため、温度に注意する必要があります。極めて重要な要素である電源のコンポーネントの温度は、周囲温度と自己発熱の合計となります。
温度:
温度が及ぼす影響は、電源のコンポーネントによって異なります。重要なコンポーネントの中には、温度の上昇によって電力損失が減少するものもあれば、増加するものもあります。入力突入電流を制限するために使用するNTCが大きな影響を与えます。このようなコンポーネントを使用した電源は、起動時や周囲温度が高い場合には電力損失が少なくなりますが(負の温度係数)、温度が高くなると、電力損失が他のコンポーネントよりも再び多くなります。(グラフ2参照)
有効な入力突入電流リミッタを搭載したデバイスの温度は安定しており、温度による電力損失はほとんど増加しません。すべての効率測定において、結果を追跡できるように、起動時間と周囲温度を記録する必要があります。
高度と気圧:
対流冷却式電源の自己発熱には、気圧が影響します。プルスでは、標高の高い場所 で使用した場合にコンポーネントから発生する熱による温度変化を算出しました(海抜2,000mで約+10°C 、海抜4,000mで約+20°C)。湿度から影響を受けることはほとんどないため、考慮する必要はありません。
サンプル分布:
コンポーネントごとに公差があるため、すべてのデバイスが同じではありませんが、プルスでは、真のエラーを特定するために、(ラボでの測定ほど正確ではないものの)製造中のデバイスの電力損失も厳密に測定しています。200台の CP10 電源の製造バッチにおいて、平均効率95.27%、偏差±0.15%という測定結果を得ました。(グラフ4参照)
電源効率とその影響に関する詳細はこちら。(リンク)
結論
スイッチモード電源の効率を正確に測定するのは容易ではありませんが、メーカーのデータシートの情報に頼るだけではなく、必要に応じて、自分で測定することが推奨されます。プルスは、長年にわたり、自社製品の正確な効率測定に取り組んでおり、お客様のあらゆる課題に対応しています。また、経験豊富なアプリケーションエンジニアチームを擁して、アプリケーションにおけるサポートを提供しています。