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電源効率を正確に測定する方法

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メーカーのデータシートには、電源電圧や負荷といった条件の違いを考慮した電源効率や電力損失の情報が掲載されていないことが多いため、ユーザー自身で電源効率を測定することが推奨されます。本記事では、電源効率測定における注意点をご紹介します。

マルチメーター、ワットメーター、パワーアナライザの中で、電源効率の測定に最適なツールは?

効率を測定する機器は数多くありますが、さまざまな信号(ACまたはDC)の測定における測定公差や機能は大きく異なります。

マルチメーター:

高精度なマルチメーターは、純粋にDCの入出力の電圧と電流の測定に適しており、電源の入力側と出力側で直接、高い精度で電圧を測定できます。電流測定機能を内蔵しているマルチメーターも多く見られますが、精度が低い(誤差1%以上)か、測定範囲が不十分(10A程度まで)なため、公差0.01%の高精度なシャント抵抗器による電流測定が求められます。ただし、変動する条件下では、数値の非同期検出はエラーにつながる可能性があります。

ワットメーター:

AC信号の測定に使用されるワットメーターによって、正しい原理に基づいて、電流と電圧の瞬時値の積から平均値を算出し、性能を物理的に定義できます。ただし、簡易ワットメーターの多くは、測定誤差率が高く(約1%)、また、入力や出力の電流(AC入力、各種出力負荷)が頻繁に変化する場合には、さらに多くの誤差が生じるため、変動する数値の正確な解釈が難しくなります。効率を正確に測定するためには高精度なワットメーターの使用が推奨されます。

データロガー:

データロガーはDC測定に適したツールです。データロガーの多くは、高精度なメーター1台で構成されており、マルチプレックスによって複数測定に対応しています。同じ測定範囲であれば、誤差を相殺し、すべての数値を瞬時に記録できるため、測定結果をスプレッドシートでスムーズに検証できます。

パワーアナライザ:

プルスでは、パワーアナライザを使用して電源効率を測定しています。(画像1参照)0.02%という高い基本精度を備えたパワーアナライザは、有効電力の正しい測定、入出力の同時・同期測定、電力損失や効率の直接表示が可能です。デメリットとして、価格が高い点が挙げられますが、効率の正確な測定・評価に最適なツールです。

画像1:プルスのスイッチモード電源の効率測定に使用される最先端のパワーアナライザ

キーポイント:

AC入力電力は、マルチメーターやデータロガーでは測定できません。電流と電圧の真の実効値を測定して、この2つの値を掛け合わせると入力電力が得られると思いがちですが、この計算方法で得られるのは皮相電力であり、電力損失に大きな影響を与える実電力ではありません。真の実効値マルチメーターを使用しても、正確なAC入力電力の値を得られないことに注意してください。

測定セットアップのミスを回避する方法

高精度で高価なパワーアナライザを使用しても、測定セットアップが適切でなければ、正確な結果を得られない可能性があります。

正しい配線:

被測定デバイスに起因しない電力損失は、測定には一切含めてはなりません。これは、測定セットアップ時の正しい配線のための大原則です。ケーブルや接触抵抗は、測定結果に誤差をもたらす可能性のある電力損失を引き起こします。適切な4端子測定(ケルビン測定)には、電流と電圧の測定に別々のケーブルを使用する必要があります。(画像2参照)

電圧源:

DC入力電圧のスイッチモード電源には、シンプルなDC電圧供給で十分です。電圧源の内部抵抗が、電源の正弦波の曲線形状を通じてAC測定に与える影響を確認しておくことが重要です。PFC非搭載の240W電源では、絶縁型電圧調整器からのソフト電力と電子式AC電源からのハード電力の間に0.4%の差が測定されました。これによって最も再現性の高い値を得られます。

電源の正しい配線が不可欠です。

画像2:正しい配線が不可欠。電流と電圧の測定には、別々のケーブルを使用した適切な4端子測定(ケルビン測定)が必要です。

EMC干渉:

試作段階のシールドされていない電源は、メーターに干渉したり、負荷を変動させたりする可能性があります。メーターからのHF干渉がある信号は受け入れてはなりません。入力ラインにインダクタ主体のフィルタを追加することによって、これを回避できます。また、電力損失が測定に影響しないようにする必要があります。電波干渉を抑制するクリーンな電源であれば問題ありません。

負荷:

電源に加えて、使用する負荷にも安定性と再現性が求められます。電力抵抗器の負荷は、定電流を流さないため問題となりますが、電子負荷は、被測定デバイスの再現性のある定義された負荷であり、遷移抵抗が変動しても電流は変化しません。

環境条件に関する注意点

環境条件に関して、電源からの電力損失は温度に依存するため、温度に注意する必要があります。極めて重要な要素である電源のコンポーネントの温度は、周囲温度と自己発熱の合計となります。

温度:

温度が及ぼす影響は、電源のコンポーネントによって異なります。重要なコンポーネントの中には、温度の上昇によって電力損失が減少するものもあれば、増加するものもあります。入力突入電流を制限するために使用するNTCが大きな影響を与えます。このようなコンポーネントを使用した電源は、起動時や周囲温度が高い場合には電力損失が少なくなりますが(負の温度係数)、温度が高くなると、電力損失が他のコンポーネントよりも再び多くなります。(グラフ2参照)

有効な入力突入電流リミッタを搭載したデバイスの温度は安定しており、温度による電力損失はほとんど増加しません。すべての効率測定において、結果を追跡できるように、起動時間と周囲温度を記録する必要があります。

グラフ2:NTCによって、効率は時間や温度に大きく左右される。

グラフ3:NTC非搭載の有効な入力突入電流リミッタは、時間や温度に左右されない効率を実現する。

高度と気圧:

対流冷却式電源の自己発熱には、気圧が影響します。プルスでは、標高の高い場所 で使用した場合にコンポーネントから発生する熱による温度変化を算出しました(海抜2,000mで約+10°C 、海抜4,000mで約+20°C)。湿度から影響を受けることはほとんどないため、考慮する必要はありません。

サンプル分布:

コンポーネントごとに公差があるため、すべてのデバイスが同じではありませんが、プルスでは、真のエラーを特定するために、(ラボでの測定ほど正確ではないものの)製造中のデバイスの電力損失も厳密に測定しています。200台の CP10 電源の製造バッチにおいて、平均効率95.27%、偏差±0.15%という測定結果を得ました。(グラフ4参照)

電源効率とその影響に関する詳細はこちら。(リンク)

グラフ4:プルスでは200台のCP10電源の製造バッチにおいて、平均効率95.27%、偏差±0.15%を達成。

結論

スイッチモード電源の効率を正確に測定するのは容易ではありませんが、メーカーのデータシートの情報に頼るだけではなく、必要に応じて、自分で測定することが推奨されます。プルスは、長年にわたり、自社製品の正確な効率測定に取り組んでおり、お客様のあらゆる課題に対応しています。また、経験豊富なアプリケーションエンジニアチームを擁して、アプリケーションにおけるサポートを提供しています。